内向型警備員の読書ブログ

いろんな本に助けられてきました

北野武「全思考」

 

”物体は激しく動けば、それだけ摩擦が大きくなる。人間だって、激しく動くと熱を持つのだ。端から見れば、輝いている人間のことが、きっと羨ましく見えるのだろう。だけど、輝いている本人は熱くてたまらないのだ。”

 

あのたけしさんからこんな言葉が出てくるなんて、少し以外でした。

漫才ブームから始まって40年以上、芸能人、そして映画監督としてもいまだに活躍し続ける天才の本音が聞けた気がします。

 

”コツコツと真面目に働いて、家族を守り、子供を育てる。それだけでも、十分に人生を生きたという満足感は得られる。有名になろうが、いい映画を作ろうが、その満足感には大差がないだろうことは、この歳になってみればよくわかる。”

 

若い頃はテレビばかり見ていたので、表に出てくる芸能人やスポーツ選手ばかりがカッコよくて最高の生き方をしていると思っていました。

しかし私自身も歳を重ねて、色々な人と仕事をしたり、話を聞いてみたりすると、どんな人でも自分の人生を輝かせ、満足感や充実感を得ることができるということが、実感として分かってきたように思います。

 

”だいたい、今の社会は、人生とは何かとか、人間の生きる意味は何かみたいなことを、言い過ぎる。若い人には、それが強迫観念になっている。何かというと、そういうことを言う大人が悪いのだ。自分たちだって、生きることと死ぬことの意味なんか、絶対にわかってないくせに。”

 

これは自分の耳にも痛い言葉です。

自分の場合は、三回目の転職に失敗した頃から、色々考えるようになりました。

昔は、毎日一生懸命働いて、結婚して、子供を育てて、みたいな漠然とした未来を想像しながら、他は何も考えずに生きていました。

しかし、仕事もうまくいかない、結婚も出来るかどうかわからない、などと人生につまづくと、途端に人生について考えだす(今までたいして考えたこともないくせに)。

こんな自分がいやになります。

 

”天国や地獄が本当にあるのかも、神様がいるのかいないのかも、だれも証明したことがないわけだ。そういう曖昧な状態なのに、生きる意味を探せなんてことを言われたら、誰だって迷うにきまっている。自分の能力だけで、その迷いから抜け出せる人間なんて、ほんの一握りなのだ。”

 

あのたけしさんにそう言っていただくと、少しだけ気が楽になります。

なので、凡人は凡人らしく、死ぬまで迷いながら生きていくことにしました。

 

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